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IFRSと経営/ITシステムについて考える(3)

鈴木 大仁氏

アクセンチュア(株) パートナー

グローバル先進企業の取組み

IFRSを活用し、「松企業」への変革を果たしたグローバル企業の情報システム、システム以外の側面も含めたグローバル経営管理モデルについて説明する。現在、日本でも「松企業」を目指して検討や構想を始めている企業もあり、日本企業にとっては、IFRSへの対応がグローバル経営管理モデル再構築の始まりにつながると考えている。

[1]多極化経済において各企業に求められる能力

今回の世界同時不況は、世界の資本市場がもはや一体化していることを示している。ITの急速な進展により、1国や1企業の動向がタイムリーに世界経済に影響するようになった。その影響の範囲は、先進国のグローバル企業にとどまらず、さまざまな国やその国内企業、消費者にまで及んでいる。

これまでの日米欧を中心とする世界三極、アジアを含めた四極といった地域や国という管理単位の壁はなくなり、新興国、途上国も含めて市場は繋がってきている。まさに多極化という言葉で呼ぶことが相応しい多極一体型経済が、今後私達がプレーし続けねばならない場所となる。

このような環境下で各企業はどのような経営能力が求められるのだろうか。まず、地域や国を超え、本社と各拠点間の事業や製品、サービス、業務取引ごとの業績情報を“見える化”する力(マイクロ・マネジメント力)が求められる。さらにその実績値を踏まえて、タイムリーに業績を予測し、拠点ごとの対応アクションを促す経営能力が求められる。

[2]グローバル・ハイパフォーマンス企業

アクセンチュアが2006年から2008年に実施した調査(High Performance IT Research 2006-2008)では、

企業のIT関連支出を、固定的IT支出(運用保守費用)と新規IT投資(成長やコスト削減のための投資)に分けて分析している。これによると、日本企業のIT支出のうち、76%が固定的IT支出であるのに対し、欧米企業では53%に留まるという結論が出ている。

また、ハイテク、自動車、消費財、保険業を始め、各業界のトップクラス企業として名を連ねている欧米の多国籍企業では、売上高成長率(CAGR)が10%以上(一方、日本企業は数%)、営業利益率は欧米企業が10~20%代(一方、日本企業の多くは数%)というレベルの他者を凌ぐ圧倒的な業績を誇っている。

では、IFRSの先駆者である欧州のハイパフォーマンス企業の情報システムの構築思想を以下に説明する。

[3]徹底した標準システムの採用

(1)コード標準化の重要性

IFRS対応の次世代会計システムを動かすには、会計処理の基盤となる各種コードの標準化も重要な要素となる。 まず、第一に勘定コードの共通化は必須である。現状では、グループ内各社で単体勘定コードは個別定義、さらに単体・連結でも勘定コードは別々という企業も多いことと思う。次に企業の組織体系や業績管理単位によって決まるセグメントコードの標準化も重要となる。現状では、グループ内各社でコード体系も意味もバラバラという企業も多い。各種コード統一を図ることは大きな労力を要するが、何よりも重要なポイントとなる。たとえば、グループ全体の見える化を推し進めるには、従来の大きな事業部門や国という単位のみならず、製品グループやブランド、販売チャネルや顧客、販売店舗や営業マンというレベルまでのコードの共通化が必要となる。そして初めて、グループ全社のセグメント報告、経営管理が意味のあるものとなる。このように、グループ全社で体系と意味が統一された業務コード(勘定コードやセグメントコード)で、会計処理の最小単位である仕訳明細が構成されることにより、制度連結や連結経営管理においては、マネジメントが求める切り口・階層レベルで仕訳明細を集約し、一貫性のある会計数値の提供・報告を実現していくことが可能となる。

(2)標準システムの構築思想

ERP(単体会計システム及び基幹系業務システム)

日本企業でも従来から国内や海外の拠点に標準システムを導入してきたが、それらの多くは同じ製品ベンダーの同一ERPシステムを使用していても、一拠点で構築したシステムを、ほかの拠点ではコピーし、独自にカスタマイズを加える、もしくは最初から別々に構築する、という個別最適の考え方に立ったものであった、連結会計に対応するため、連結勘定科目、会社コード、一部取引先や製品コードなど限定された部分のみ共通化し、それ以外は拠点毎に独自を許容、それが当たり前という状況であった。

一方、欧米のグローバル企業の標準システムでは、コードやマスタ、システム機能の徹底した共通化、物理的な共有を推し進めている。IFRS対応を契機に、ここ2~3年の間にグローバルERPシステムを構築した欧州企業の中には、販売物流・製造・調達・会計・人事といった基幹系業務全般を範囲とし、その約85%の機能をグローバルで共通化した、またIFRSベースの会計業務のみを対象範囲として場合、98%の機能を共通化したという報告も聞いている。

また、ITの進歩により、クラウド・コンピューティングに代表されるような、ERPによる全世界の業務や経営管理を1インスタンス(ハードウェアやアプリケーションの実行環境)上に集約し、運用することが既に可能な世の中になっております。そして、情報システム面の効果だけを見ても、徹底した標準化や共通化、ERP運用保守業務を集約することにより、トータルコストの大幅削減に成功しているグローバル企業の事例が、既に数多くあがっている。システムの初期開発コストについても、拠点ごとバラバラにERPを導入することに比べ、トータル・コスト効率に優れていることは一目瞭然である。

初期ERP導入ブームは、会社単位の導入だった訳だが、これからのERP導入は、グループ単位で導入する。つまり、IFRSの思想と同様に、ERPも単体経営からグループ経営を支えるシステムへの進化していくものと、捉えるべきだろう。

連結会計システム

欧米グローバル企業の連結会計システムは、ERP内の単体会計システムとIFRSベースで勘定科目が統一され、またセグメント情報についても、PLのみならずBS勘定含め、ERP側からダイレクトに入ってくる形式を採っている。つまり組替えや付替えなどが介在せず、シンプルな形でERPから連結まで一貫したシステム構成となっている。このような仕組みは、日本企業では、とても珍しいが、弊社アクセンチュアもしかり、1998年あたりから、IFRS以前に、US-GAAPにより全世界の現法人オペレーションを同一の会計基準にのせ、グローバル経理・経営統合を推し進めてきたグローバル企業の10年来の歴史が物語っている。

彼らは、会計システム全体を、このようなにシンプルにしているため、連結会計システム単体での価値については、“複雑な組替えや調整機能の充足度”よりも、“グループ各社からのデータ(連結情報パッケージ)収集機能の充足度”、 “制度連結要件と同時に、管理連結要件への適応度”といった尺度から捉えているものと考える。

予算/業績予測システム

もう1つの特徴は、グループ予算/業績予測管理である。実績値をIFRSで統一した後に来るのは将来の予測である。本社と各拠点とがグローバル横断で効率的にPDCAをまわすために、欧米グローバル企業ではグループ共通予算や業績予測システムが導入されている。しかし、日本企業では本社での予算管理はおろか、国内外の関係会社含めた標準化もできておらず、未だ表計算ソフトによるマニュアル連携に頼っている企業が多いのが実情だ。

日本企業も、まずは、実績値をIFRSベースで連結させるところからIFRS対応を始められるものと認識しているが、間違いなく、次のステップは、予算編成や業績見通し業務/システムのグループ共通化だと言える。

総勘定元帳の持ち方・・・GoCoA (Global operating Chart of Account)

総勘定元帳のモデルについて前述したが、ここでは、グローバル・ハイパフォーマンス企業が実装している総勘定元帳/勘定科目表を紹介する。上側は日本企業における従来の元帳の持ち方でIFRS対応した場合、下側はハイパフォーマンス企業の元帳の持ち方を示している。例えば、単一国(日本国内のみなど)に限定してグループ内の関係会社の勘定をIFRS対応させる場合は、単純にIFRSと日本基準の財務諸表(税務対応目的)の2つの会計基準に沿った元帳と勘定科目表を構築し、それを各社に適用させるのみになる。複数元帳を選択する場合は、IFRSの勘定科目表と日本基準の勘定科目表を切り分け、パラレルで自動記帳させる形式をとる。一方で単一元帳を選択する場合には、IFRSベースの勘定科目に対して自動記帳させ、税務対応時のみ日本基準固有の勘定科目に対して組替え仕訳を行う形式になる。

では、欧米グローバル企業のように、1つの元帳で、IFRSと同時に複数国の会計基準/税法に同時に対応させるには、どのような元帳の持ち方が必要となるのか。この答えがIFRSを含めた複数国基準に対応可能な総勘定元帳「GoCoA」(Global operating Chart of Account)である。松コースでIFRS対応を目指す場合、そのエンジン部分としてGoCoAは非常に重要な要素であり、企業のビジネスのグローバル展開を根底で支える強みとなるのだ。

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