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IFRSの基本 連載第20回:IFRS導入プロジェクトの進め方(2)

【デロイトトーマツコンサルティング株式会社 マネジャー 中小企業診断士 柳澤 哲史氏】

今回(第20回)は、【フェーズ1】調査・分析として、どのようにIFRSの導入による自社グループへの影響を調査・分析するのか、また、調査・分析結果を踏まえてどのようにIFRSの導入ロードマップを策定するのか解説します。

1.プロジェクト計画の策定

(1)プロジェクトの体制の検討

まずは、フェーズ1を通したプロジェクトの体制の検討を行います。プロジェクトの初期は、影響や課題の分析およびロードマップの策定が主な作業になるため、連結決算等を担当しており、自社グループ全体の決算業務を把握している少数でチームを構成するのが通例です。しかしながら、IFRSの導入は、自社グループ全体での取り組みが必要であり、その内容も経理のみに限定されるものではなく、営業・購買・システム部門といった多くの部門に関連するため、適宜分科会等を開催し、随時これらの部門と連携を取れるようにすると良いと考えます。

(2)プロジェクトの進め方および成果物の検討

IFRS導入プロジェクトを成功させるためには、どのような範囲の調査を、何を目的に、誰が、どうやって、いつまでに完了するのかといったプロジェクトの進め方を策定し、プロジェクトメンバーに進め方や成果物を理解してもらうことが重要となる点に注意してください。

IFRS導入は通例3年以上の長期に渡るプロジェクトになりますので、初期の段階で、進捗状況を確認する定例会などの各種会議体の設計や、課題管理・品質管理を行う仕組みなどの、プロジェクト運営ルールを明確に策定しておくと、プロジェクト全体の効率性が向上します。また、プロジェクトメンバーが進め方を学び、プロジェクト計画が机上の空論でないかを検証するためにも、パイロットとして特定分野について分析作業を行うことが有効です。

なお、IFRSは継続的に改訂が続けられている「Moving Target」であり、自社グループが適用することになる基準書で影響分析を行う必要があります。そのため、基準改訂スケジュールを加味したプロジェクトの進め方を策定することに留意してください。

2.会計基準差異分析と課題の識別

(1)会計方針の差異調査

会計基準差異分析と課題の識別の基本的な流れとしては、「会計方針の差異調査を行い、その差異が業務・システムに与える影響を調査し、それぞれにおける課題を識別する」というものになります。

まずは、会計方針の差異調査ですが、現行とは異なるIFRSでの会計処理を明確にすることが目的となります。これを行うためには、自社グループのビジネスと関係の無い基準(「農業会計」などは、多くの企業にとって影響はないと考えられます)を除き、網羅的に差異抽出を行う必要があります。しかしながら、網羅的に差異を抽出することは日本基準とIFRSを完全に理解していないと難しいため、監査法人等のアドバイザーから一般的な差異項目リストを入手し、これを出発点として検討を行うことをお勧めします。また、差異のある項目全てについて、同じレベル感で業務・システムへの影響分析を行うことは非効率・非実現的であるため、会計差異を把握するのと同時に、その重要度合いも検討しておくと良いと考えます。なお、IFRSの要求する開示項目にかかる差異の抽出も本ステップで忘れずに実施しておく必要があることに注意してください。

(2)業務・システムへの影響調査

次に、業務・システムへの影響調査ですが、プロジェクト全体におけるコスト・対応期間のうち、業務・システム対応が占める割合が大きくなる場合が多く、通常経営者はIFRS導入にあたってのコストや対応期間に関心を示しているため、業務・システムへの影響調査は非常に重要になると認識してください。会計差異に対する業務・システムの対応策は、マニュアルで対応するのか、または、システムを改修するのかなど、複数の案があります。これについては、自社グループが「必要最低限の投資でIFRSに対応する」のか、または「IFRS対応に合わせて経営管理レベルを向上させる」のか、自社グループとしてのIFRS導入のゴールに基づき検討することが望ましいと考えています。しかしながら、自社グループのゴールが明確になっていない場合もありますので、対応策案それぞれについて、その効果や必要コストなどを整理し、ロードマップの決定時に自社グループにおけるIFRS導入のゴールを、経営層に諮る方法も考えられます。

なお、IFRS導入における業務・システム面でのコストや対応期間は、会計方針の選択結果と、それに対する業務・システムの対応方針に依存することになります。そのため、会計方針に選択肢があるものについては、業務・システムへの影響などの長所・短所の比較検討を行い、仮決定しておく必要があります。

3.導入ロードマップの策定

(1)導入ロードマップ案の策定

上記の分析結果を踏まえ、IFRS導入のためのロードマップを策定します。ロードマップの策定においては、“何を(What)”“いつまでに(When)”実施する必要があるのかを踏まえ、“どのように(How)”IFRSを導入するのか検討します。また、前述の差異項目リストのように監査法人等のアドバイザーは、ロードマップの雛形を保有しているため、これを入手し参考にしても良いでしょう。

【IFRS導入プロジェクトの全体像(2015年3月期適用イメージ)】

上記の通り、まずは“何を(What)”“いつまでに(When)”実施する必要があるのか整理する必要があります。そして、この結果を踏まえてロードマップとして各タスクを整理します。例えば、親会社として策定した会計方針の「子会社展開」などは、自社グループにおける子会社数やグループ全体における各子会社の重要性などによって、必要となる期間が大きく異なります。また、全ての企業に該当することではありませんが、海外子会社がIFRSを導入する場合(所在国でIFRS導入が必須になった場合など)に、当該子会社に合わせてIFRSを導入する場合もあります。このように、IFRS導入のロードマップは各社によって大きく異なるものになります。

また、ロードマップは、どのタスクにどの程度の工数が発生し、どの部門がそれを担当するのかなど、自社リソースとの兼ね合いも重要になります。フェーズ2の体制は、システム開発やトレーニングなども含めると、大規模な体制になることもあります。仮に十分なリソースを社内で確保できないことが想定される場合は、外部リソースへの活用も検討し、社内意思決定のためにも必要なコストを見積っておくことが望ましいと考えます。

(2)社内意思決定

通常、ロードマップ策定後に、役員会などでIFRS導入にかかる意思決定を仰ぐことになります。ここでの決定が、IFRS導入プロジェクトの内容だけでなく、導入後の業務負荷や自社グループにとっての付加価値を決めることになります。そのため、ロードマップ策定のための、十分な準備と慎重な検討がプロジェクトの成否を分けることになると考えています。

第21回に続く

文中意見にわたる部分は執筆者の個人的な見解であり、執筆者の属する組織の公式な見解ではありません。

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