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IFRSの基本 連載第14回:IFRS 導入の影響-連結・企業結合(その2)

【有限責任監査法人トーマツ IFRSアドバイザリーグループ シニアマネージャー 公認会計士 高田 康弘氏】

企業結合会計において、IFRS第3号「企業結合」と従前の日本基準との間では、多くの差異が見られました。しかし平成22年4月1日以降適用されている日本基準(企業結合に関する会計基準(企業会計基準第21号) 以下、「改訂日本基準」)では、IFRSとの差異はある程度解消されています。

しかし、IFRSと改訂日本基準との差異はそれでもなお少なからず残っています。前回の連結に引き続き、今回は企業結合につき、主な差異として残っている以下の項目についてご紹介します。

1.共通支配下の企業結合の規定

2.リストラ費用(負債)の認識

3.非支配持分の認識・測定

4.条件付対価

5.取得コスト

6.のれんの償却

なおIFRS における企業結合の会計処理である「取得法」は、概ね次の手順で進みます。

(1) 取得企業の決定

(2) 取得日の決定

(3)取引資産・引受負債の認識・測定

(4)非支配持分の認識・測定

(5)取得対価の認識・測定(取得費用)

(6)のれん/バーゲン・パーチェス利得の認識・測定

1.共通支配下の企業結合の規定

IFRSでは、次の取引は企業結合の対象外とされています。

(1)ジョイント・ベンチャーの形成
(2)事業を形成しない資産または資産グループの取得
(3)共通の支配下にある企業または事業の結合

上記(3)のように、IFRSでは共通支配下の企業等による企業結合について規定がない点が、改訂日本基準(原則として移転直前に付されていた適正な帳簿価額により計上)と相違します。

このため、企業がIFRSにて共通支配下の企業結合を処理する場合は、IAS第8号に記載されているIFRSの会計方針の決定に関する優先順位に従い、IFRSの他の規定に反しない限りにおいて、IFRSのフレームワークや、他国の会計基準、実務慣行等を参照した上で、適切な会計処理を採用することになると考えられます。

2.リストラ債務(負債)の認識

IFRSでは、事業の終了などのリストラクチャリングに関連する債務について、企業結合を見込んで計上される場合は企業結合が有効になるまでは被取得企業の「現在の債務」ではなく、一般に企業結合会計には含まれないとされています。ただし、取得後の財務諸表において引当金の計上などに関連するIFRSの規定により検討することになります。

改訂日本基準では、上述のようなリストラクチャリング関連債務は、取得後に発生することが予測される特定の事象に対応した費用または損失であり、発生の可能性が取得の対価の算定に反映されている場合(引当金の要件を満たす場合)には、企業結合時に負債として認識することになります。

3.非支配持分の認識・測定

非支配持分とは、子会社における(直接的にも間接的にも)親会社に帰属しない持分であり、日本基準の少数数株主持分に当たります。IFRSでは、非支配持分の測定につき、以下の2つのうちのどちらかを企業結合ごとに選択して処理します。

(1)非支配持分の取得日時点の公正価値
(2)被支配企業の取得日時点の識別可能純資産の公正価値に対する非支配持分割合

改訂日本基準では、少数株主持分(非支配持分)を(1)のように取得日時点の公正価値で測定することは認められていません。この差異は、連結財務諸表の作成目的において、IFRSでは「経済的単一体説」によっており、一方、改訂日本基準では基本的に「親会社説」による考え方を踏襲した取扱いを定めているため生じていると言われています。

またこの差異により、IFRSでは(1)の処理の場合は非支配持分に対応するのれんが計上されることになりますが、改訂日本基準では少数株主持分に対応するのれんは計上されません。

4.条件付対価

条件付対価とは、企業結合契約において定められているものであって、企業結合後の特定の事象または取引の結果に依存して、企業結合日後に追加的に交付または引き渡される取得対価と定義されています。

このような条件付取得対価について、IFRSでは、取得日の公正価値(発生可能性も反映する)で認識し、取得日以後に当該公正価値の変動があった場合に一定の会計処理をするとしています。一方、改正日本基準では、当該条件付取得対価の交付または引渡しが確実となるまで会計処理を行わないものとされています。

5.取得コスト

IFRSでは、取得に関連する費用、たとえばM&Aに関連して投資銀行や弁護士等に支払ったアドバイザリー手数料は、発生した期間に費用として処理します。これに対して日本基準においては、これらのM&Aに直接要した支出は、企業結合の取得原価に含まれると規定されているので、支配獲得時に計上される「のれん」の金額に加算されることになります。

6.のれんの償却

IFRSでは、のれんは資産に計上し、償却を行わず毎期減損テストを行い、減損テストはIAS第36号「資産の減損」の規定に基づいて処理することとなります。一方、改訂日本基準では従来の通り、のれんは20 年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却することとなります。

なお、のれんが「負ののれん(IFRSでは、「バーゲン・パーチェス利得」と呼ばれます)については、改正前の日本基準では負ののれんは負債計上し、20年以内の適切な期間で規則的に償却することとされていました。しかし、改訂日本基準においてはIFRSと同様の方法が採用されています。

まとめ

番号 項目 IFRS 改訂日本基準
1 共通支配下の
企業結合の規定
(基準上、規定なし) 企業結合の資産負債は、原則として、移転直前に付されていた適正な帳簿価額により計上
2 リストラ費用(負債)の認識 その企業結合がリストラの前提であれば、被取得企業の「現在の債務」ではないため、計上しない 引当金の要件を満たす場合は、計上する
3 非支配持分(少数株主持分)の認識・測定 取得日の「非支配持分の公正価値」または「純資産(資産・負債を評価後)に対する非支配持分割合」のどちらかを選択して処理することが可能。
前者の場合は、非支配持分に対応する「のれん」も計上される
左記のうちでは、「純資産(資産・負債を評価後)に対する少数株主持分(=非支配持分)割合」のみで計上
4 条件付対価 企業結合会計において、取得日の公正価値を見積もって(発生可能性も考慮して)、計上する 条件付取得対価の交付または引渡しが確実となるまで、会計処理を行わない
5 取得コスト 費用処理 取得原価に含める(のれんに反映)
6 のれんの償却 非償却。最低限年1回減損テストを実施(IAS36に規定) 資産に計上し、20年以内に規則的に償却。必要に応じて減損

第15回に続く

文中意見にわたる部分は執筆者の個人的な見解であり、執筆者の属する組織の公式な見解ではありません。

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