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IFRSの基本 連載第13回:IFRS 導入の影響-連結・企業結合(その1)

【有限責任監査法人トーマツ IFRSアドバイザリーグループ マネージャー 公認会計士 松澤 伸氏】

IFRSへのコンバージェンスの一環として、わが国でも「企業結合会計に関する会計基準」および「連結財務諸表に関する会計基準」ならびにこれらに対応する実務指針等が改正され、IFRSとの差異の一部が解消されました。

しかし、IFRSとの差異はそれでもなお少なからず残っていますが、これらはIFRS特有の考え方に起因するものでもありますので、今回から2回にわたり、IFRSにおける連結および企業結合の規定について説明いたします。

1.子会社の範囲

(1)IFRSと日本基準の差異

日本基準における子会社は、他の企業の意思決定機関を支配している企業をいい、原則として、支配の存在を自己および緊密者が議決権の過半数を所有しているか否かに基づいて判断します。

一方IAS第27号でも、支配の有無により子会社を定義している点は日本基準と同様ですが、議決権の過半数を支配する力のほか、議決権の所有割合にかかわらず、法令又は契約によって企業の財務方針及び経営方針を左右する力や、取締役の過半数を選任又は解任する力等を有する場合にも支配が存在するものと定めており、日本基準における子会社よりもその範囲を広くとらえています。

さらにIAS第27号では、経営者の意図及び行使・転換するための財務能力にかかわらず、企業が保有する潜在的議決権が現時点で行使可能又は転換可能であるかに基づき支配の存在を検討することとしています。

従って、たとえば一定の保有期間や利益水準等を満たした場合にのみ行使可能となるような新株予約権は支配の存在を評価する際に考慮しない反面、アウト・オブ・ザ・マネーである株式コール・オプションも、法的に行使可能である限り、基本的に考慮することになります。

(2)実務に与える影響

現状、緊密者による議決権の保有がない限りにおいて、自己が他の会社の議決権の40%以上を保有している場合にのみ、子会社と判定する際の他の要件の検討を行う実務がとられています。しかし、IAS第27号にはこのような定量的な基準はなく、IFRS適用後は、議決権保有割合にかかわらず、実質的な支配関係の有無に基づき支配の存在の有無を判断することが必要となります。

また、潜在的議決権についていは、発行当初よりその行使条件を把握しておく必要があるほか、自己の保有のみならず、他者への発行状況を継続的に把握しておく必要があります。

2.連結範囲

(1)IFRSと日本基準の差異

日本基準では、子会社のうち、支配が一時的であると認められる企業や、特定目的会社が一定の要件を満たす場合等には、これらの子会社を連結の範囲に含めないこととされているほか、重要性が乏しい場合には、連結の範囲に含めないことも認められています。

一方IFRSでは、これら例外的な定めはなく、原則通り支配の有無にもとづき連結の範囲を決定することとなります。ただし、子会社に対する支配が1年以内に喪失するような子会社株式の売却計画を確約している場合等には、IFRS第5号の一般的な取り扱いに準じて、当該子会社のすべての資産及び負債を売却目的保有に分類することになります。

(2)実務に与える影響

IFRS適用後は、原則としてすべての子会社を連結の範囲に含めることが必要となることから、新たに連結対象となる子会社の決算情報も適時に収集する必要があり、早期の対応が求められます。

3.報告日の統一

(1)IFRSと日本基準の差異

日本基準では、子会社の決算日と連結決算日の差異が3か月以内の場合、決算日のずれから生じる重要な内部取引の調整を行うことを条件に、報告日の異なる子会社の財務諸表にもとづき連結財務諸表を作成することを許容しています。

また、支配獲得日、株式の取得日又は売却日が子会社の決算日以外の日である場合にも、当該日の前後いずれかの決算日に支配獲得、株式の取得又は売却等が行われたものとみなして処理することも認められます。

一方、IAS第27号は、連結財務諸表の作成に用いる親会社及びその子会社の決算日の統一を求めており、親会社の決算日が子会社と異なる場合にも,実務上不可能な場合を除き、親会社の報告日で仮決算を行うことを求めているほか、実務上不可能な場合にも、子会社の報告日および異なる報告日・報告期間を利用する理由の開示を求めています。また、子会社の報告日が親会社と異なる場合には、その期間に生じた重要な内部取引のみならず外部との取引や、重要な事象の影響についても、調整を行う必要があります。

また、支配獲得日等についての簡便的な定めはなく、支配獲得日等にもとづき連結財務諸表を作成することが必要となります。

(2)実務に与える影響

IFRS適用後は、原則として報告日を統一することが必要となることから、まず子会社の決算日の変更が現地法制度上可能か否か調査し、決算日を変更しない場合には、仮決算を適時に行うことによる対応が必要となります。

また、実務上不可能であるとして、親会社と異なる報告日を利用する場合には、親会社の報告日との間に生じた企業結合、 資産の減損および偶発負債の顕在化等にかかる情報を適時に収集し、必要な調整を行うことが必要となるほか、親会社の報告日にもとづき、当該子会社の資産・負債の流動・非流動分類を組み替えることも必要となります。

4.会計方針の統一

(1)IFRSと日本基準の差異

日本基準では、同一環境下で行われた同一の性質の取引・事象は、原則として連結グループ内の会計処理を統一することとなっています。ただし子会社の財務諸表が、国際財務報告基準又は米国会計基準に準拠して作成されている場合には、限定的な調整を行うことにより、当該子会社の財務諸表を連結上も利用することができるものとされています。

一方IAS第27号では、子会社の適用する会計基準にかかわらず、類似の状況における同様の取引及び事象に関しては、統一の会計方針を適用することを求めています。

(2)実務に与える影響

IFRSに準拠して連結財務諸表を作成する場合には、統一の会計方針を適用する必要があるため、一般に連結グループ内の会計方針や会計処理マニュアル等を整備する必要があるといわれています。その際、減価償却方法、棚卸資産の評価方法等、有価証券報告書等においてすでに開示している会計方針のみならず、収益の認識規準や棚卸資産の取得原価の範囲等、類似の状況における同様の取引及び事象に関しても、原則として連結グループ内の処理を統一することが必要となります。

5.関連会社の範囲および持分法の適用について

関連会社の範囲、持分法適用範囲、報告日の統一および会計方針の統一については、IAS第28号において、基本的に上記と同様の対応を求めています。そのため、関連会社であっても、報告日および会計方針は、報告企業のものと統一する必要があることから、連結財務諸表作成に必要となる情報を適時に収集し、必要な調整を加えることが必要となります。

6.最新動向

IASBは、2008年12月にIAS第27号「連結及び個別財務諸表」及びSIC第12号「連結-特別目的事業体」に代わり、連結の新たな基準案である公開草案第10号(ED10)を公表しています。ED10では、支配の定義を「他の企業の活動を指図するパワー」とより広くとらえており、特にストラクチャード・エンティティや潜在的議決権を保有する場合、子会社の範囲に影響を与える可能性があるといえます。IASBは、2010年12月までの最終基準化を予定しています。

またIASBでは、投資会社は投資先を連結せずに公正価値評価するという投資会社会計についても現在議論を行っており、2010年12月までの公開草案の公表および2011年6月までの最終基準化を予定しています。

第14回に続く

文中意見にわたる部分は執筆者の個人的な見解であり、執筆者の属する組織の公式な見解ではありません。

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