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IFRSの基本 連載第7回: IFRS 導入の影響-有形固定資産(その2)

【デロイトトーマツコンサルティング(株) マネジャー 大木 和俊】

前回(第6回)では、有形固定資産に関する日本基準とIFRSの違いに関する主な内容を説明しました。今回は、これらの違いを踏まえた業務プロセスおよび情報システムに求められる要件を考察し、IFRS導入における固定資産管理システム改修に関する方向性を紐解いていきます。 これら有形固定資産に関する論点は、主に企業の「固定資産システム」へ影響を及ぼすことが想定されます。固定資産システムとは、企業が保有する固定資産(例.設備や不動産等)をシステム上の台帳で管理し、減価償却や取得・除却といった一連の固定資産関連業務をシステム上で実行するためのシステムです。ただし、一概に固定資産システムといっても、調達方法や業態によっては、建設仮勘定管理やリース資産管理などの、様々なモジュールが関連しており、検討すべき領域は多岐に渡ることもあります。

以下、IFRSによる固定資産システムにおける主要な検討ポイントについて解説します。

固定資産データの保持方法

前回ご説明したように、IFRSでは有形固定資産の重要な構成要素(コンポーネント)については、個別に減価償却を行う必要があります。そのため、これまで総合償却されていた固定資産群や飛行機等の一部の資産については、固定資産台帳上、資産の構成要素単位に管理し、減価償却を行う必要があると考えられます。構成要素となる個別の資産群は、グルーピングされて一つの有形固定資産となることも情報として保持しておく必要があります。併せて、定期的な取替や大規模な定期検査等についてもコンポーネント単位に償却を行う必要があります。

減価償却計算

IFRSでは定額法、定率法、生産高比例法等の中で、予想される将来の経済的便益の消費パターンを最も的確に反映する方法を用いて、資産の耐用年数に則って規則的に減価償却を行う必要があります。
現行、経済的便益の消費パターンよりも、むしろ税務要件に即した減価償却方法(定率法が多い)と法人税法上の法定耐用年数、残存価額を使用し、償却限度額等も加味した方法で償却計算ロジックが組まれていることも少なくないと想定されます。そのため、そうした税務要件にとらわれない、IFRS独自の考え方に基づく償却計算ロジックを実装させる必要があると考えられます。
また、最低年に一度は償却方法を確認し、経済的便益の消費パターンに変更が生じた場合には会計上の見積りの変更として扱う必要があります。そのため、減価償却方法、残存価額、耐用年数については、経済的実体を踏まえて少なくとも各会計年度末に見直し、その結果による減価償却の再計算、再計算結果に基づく会計仕訳の総勘定元帳への転記が必要となる可能性があります。

減損の戻入れ

IFRSでは一定の状況下において過年度に認識した減損損失を戻入れる必要があります。しかし、日本基準では減損の戻入れはできないため、固定資産システムにおいても一度減損処理を行った資産に対しては、その戻入れ、すなわち帳簿価額の増額を行う機能は実装されていないことが想定されます。
IFRSでは、帳簿価額が「減損処理を行わなかった場合の現時点での帳簿価額」に達するまでを限度として減損の戻し入れを実施します。そのため、IFRSに基づく減損の戻入れ機能の実装に加え、この規定に照らした「減損戻入れ限度額」を管理する仕組みが必要となります。ただし、この仕組みをシステム機能として実装する場合には、固定資産システムの構造によっては「減損がなかった場合のIFRS用固定資産台帳」を保持するといった比較的大きな改修に発展する可能性もあるため、費用対効果も勘案して、システム外で計算する方法も視野に入れた検討が必要となります。

既存の固定資産データの帳簿価額再計算

現行の取得価額や減価償却計算方法がIFRS適用によって変更される場合、IFRS初度適用時には既存資産データの見直しが必要となります。具体的には、取得時に遡ってIFRSに基づく減価償却計算を行った場合の帳簿価額に修正するか、公正価値による評価が必要となります。データ数が多い場合、当該作業に膨大な工数を費やすことになる可能性もあるため、システムベンダーとも調整のうえ、早期の対応検討が重要となります。

ここまで説明してきたシステム機能要件は、会計処理上の要件を最低限満たすことを目的として導出されたものです。実際には、たとえば構成要素(コンポーネント)単位の管理を行うとなると、既存資産の金額を各構成要素にどう配分するのか、建設仮勘定からどう振り替えるのか、移動や実査といった現物管理はどの単位で行うのか、といった様々な業務上の課題が発生する可能性があります。所有する固定資産数、ロケーション数、移動頻度等が多いほど資産管理業務は煩雑になり、こうした論点のウェイトが大きくなります。 また、固定資産システムは財務会計だけでなく、法人税法などに基づく減価償却計算、台帳管理、帳票出力機能を有しています。そのため、固定資産システムでのデータ管理方法として、既存の固定資産台帳(資産データ)は今後も残し、新規にIFRS用の固定資産台帳を作成して、並行管理するという方法も検討すべきです。 こうした課題は、資産管理業務の複雑さの違いこそあれ、複数のグループ会社で共通的に認識されることが多いと思われます。そのため、グループ各社の固定資産システムを個別に改修するか、グループで統一された固定資産システムを導入するか、といった検討も必要です。

第8回に続く

文中意見にわたる部分は執筆者の個人的な見解であり、執筆者の属する組織の公式な見解ではありません。

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