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IFRSの基本 連載第6回: IFRS 導入の影響-有形固定資産(その1)

【公認会計士 山田 憲男氏】

今回(第6回)と第7回については、有形固定資産に関する日本基準とIFRSの違いについてご紹介します。

1.日本基準とIFRSの主な差異

現行の日本基準とIFRSの有形固定資産における主な差異として、次の項目を挙げることができます。

1.取得原価の構成要素

2.減価償却の単位 (コンポーネント・アプローチ)

3.耐用年数及び残存価額の決定

4.資産の減損

5.再評価モデル

第7回では有形固定資産が情報システムに及ぼす影響について考えていきます。

2.取得原価の構成要素

1.IFRS と日本基準の差異

日本基準では、有形固定資産の取得原価の構成要素について、「企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書」第三で、有形固定資産の取得原価について定められており、購入価格に付随費用を加算し、値引・割戻を控除するという基本的な考え方についてはIFRSと相違はありません。
しかしながら、日本基準では、有形固定資産を自家建設した場合にのみ、建設に要する借入資本の利子を取得原価に算入することが容認されていますが、IFRSでは、IAS第23号(2007年3月改訂)「借入費用」において、適格資産(※1)の取得、建設又は生産に直接起因する借入費用を資産の取得原価の一部として資産化することが強制されています。
なお、日本基準では、従来、資産除去債務については、有形固定資産の取得原価の構成要素に含まれていませんでしたが、企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」の公表により、この点についてのIFRSとの主要な相違は解消されました。

※1 意図した使用又は販売が可能となるまでに相当の期間を要する資産

2.実務に与える影響

有形固定資産の取得原価の構成要素について、実務に与える影響は限定的と考えられますが、借入費用の資産化について、個々の借入金について有形固定資産との直接な関係を識別したり、有形固定資産の取得がなければ避けられたであろう借入金を特定したりする必要があります。また、企業が一般目的で資金を借り入れている場合、有形固定資産を取得するためにそれを使用した範囲で、当該資産に係る支出に資産化率(※2)を乗じて、資産化する借入費用を算定する必要があります。さらに、借入費用の資産化の開始時点及び終了時点を決定するため、資産に係る支出、借入費用の発生、意図した使用又は販売に向けて資産を整えるために必要な活動の着手及び終了時点を把握する必要があります。

※2 適格資産を取得するために特別に行った借入れを除く、企業の当期中の借入金残高に対する借入費用の加重平均

3.減価償却の単位 (コンポーネント・アプローチ)

1.IFRS と日本基準の差異

日本基準では、減価償却の単位についての特段の規定はないため、実務上、法人税法上の耐用年数表に掲げられる区分や各企業の実務慣行に従い決定されている場合が多いと考えられます。一方、IFRSでは、有形固定資産に関して当初認識された金額を重要な構成部分に配分し、そうした構成部分ごとに個別に減価償却を行うこととされています。
このように、減価償却の単位を構成部分ごとに把握する考え方をコンポーネント・アプローチ(またはコンポーネント・アカウンティング)といいます。

2.実務に与える影響

日本基準において一体で減価償却が行われてきた有形固定資産について、その構成部分についての将来の経済的便益の消費パターンや耐用年数が異なる場合には個別に減価償却を行う必要があります。一方で、個別に減価償却が行われてきた有形固定資産については、減価償却方法及び耐用年数が同一である場合にはグループ化して一体で減価償却を行うことができます。

4.耐用年数及び残存価額の決定

1.IFRS と日本基準の差異

日本基準では、監査第一委員会報告第32 号「耐用年数の適用、変更及び表示と監査上の取扱い」において、過渡的な措置として、実態と明らかな相違があるなどの事実が認められない限り、当面、税法耐用年数の適用を妥当なものと認めて差支えないものとしており、また、監査・保証実務委員会報告第81号「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」においても、法人税法に規定する普通償却限度額を正規の減価償却費として処理する場合においては、企業の状況に照らし、耐用年数又は残存価額に不合理と認められる事情のない限り、当面、監査上妥当なものとして取り扱うことができるとされています。
一方、IFRS では、資産の耐用年数の見積りは、企業の経験に基づく判断の問題であるとされ、また、少なくとも各事業年度末には見直さなければならないとされています。

2.実務に与える影響

日本基準において税法耐用年数を適用している場合には、資産の耐用年数を企業にとっての期待効用の観点から見積るための方針や各事業年度末において耐用年数を見直すための方針を決定する必要があります。さらに、帳簿上、同一の有形固定資産について、法人税法上の帳簿価額とIFRS 上の帳簿価額の情報を管理するための仕組み作りなどが必要になる可能性があります。

5.資産の減損

1.IFRS と日本基準の差異

資産の減損については、日本基準とIFRS とで基本的な概念に大きな相違はありませんが、日本基準では、減損の認識の判定において、割引前将来キャッシュ・フローを使用するのに対し、IFRSでは割引後将来キャッシュ・フローを使用します。また、日本基準では、過年度の減損損失の戻入れは認められていませんが、IFRSでは一定の条件のもとに認められる場合があります。

2.実務に与える影響

割引前将来キャッシュ・フローが帳簿価額を上回っているものについても、割引後将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回っている場合には、減損損失が認識される可能性があります。また、減損損失を戻入れる場合、戻入れによって増加した帳簿価額が減損損失がなかったとした場合の帳簿価額を超えてはならないため、その価額も算定する必要があります。

6.再評価モデル

1.IFRS と日本基準の差異

IFRS では、有形固定資産は当初の取得原価から減価償却累計額及び減損損失累計額を控除した価額で計上する方法(原価モデル)及び再評価実施日における公正価値から、その後の減価償却累計額及びその後の減損損失累計額を控除した額で計上する方法(再評価モデル)の選択適用が認められています。一方、日本基準では、再評価モデルの適用は認められていません。

2.実務に与える影響

日本でIFRS適用時に再評価モデルを採用する企業は例外的と考えられますが、仮に採用する場合には、定期的に有形固定資産項目を公正価値で再評価する必要があります。

7.最新動向

有形固定資産については、IASBの基準書の改訂に係るプロジェクト計画表等で触れられておらず、また、日本基準においても欧州証券規制当局委員会(CESR)が是正を提案している重要な差異には含まれていないため、IFRS・日本基準とも特段の改訂は予定されていません。 一方で、IFRS初度適用時において、企業が税法耐用年数以外の独自の耐用年数を採用した場合、税務基準との乖離が予想されることから、将来の税制改正等の動きについては注目したいところです。

第9回に続く

文中意見にわたる部分は執筆者の個人的な見解であり、執筆者の属する組織の公式な見解ではありません。

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