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IFRSの基本 連載第17回:IFRS 導入の影響-財務諸表の表示・開示

【有限責任監査法人トーマツ IFRSアドバイザリーグループ シニアマネージャー  公認会計士 下村 和史氏】

今回は、IFRSにおける表示(各財務諸表の構成や内容等)及び開示(注記や増減表等)について、日本基準との差異及び実務への影響を中心に解説します。

1. IFRS における表示・開示の基準上の構成

IFRSにおいて、財務諸表の表示に関してはIAS第1号「財務諸表の表示」で規定されており、会計方針に関してはIAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」に規定されています。

また、注記等を含む開示に関しては各IFRS\の基準書において規定されています。IFRSにおける開示を日本基準と比較した場合の一般的な特徴としては、資産又は負債項目の増減表の開示が多いことや金融商品に関する開示が多いことが挙げられます。

2.財政状態計算書

(1)IFRSと日本基準の差異

IFRSでの「財政状態計算書」と日本基準での「貸借対照表」は名称は異なりますが、基本的な様式について大きな相違はありません。

ただし、下記のような相違点が挙げられます。

(1)流動・非流動の区分と配列
IFRSでも日本基準でも資産・負債について、原則として流動・非流動を別々の区分として表示しなければなりません。ただ、固定性配列法と流動性配列法という配列法に関しては、IFRSでは特に指定がなく実務上両者が混在しているのに対して、日本基準では特定の業種で指定がある場合を除いて基本的に流動性配列法が必須とされている点で差異があります。
(2)売却目的で保有する資産の区分表示
IFRSにおいては、IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」に従って「売却目的」保有に分類される非流動資産又は処分グループ資産は売却費用控除後の公正価値で区分表示されるとともに、直接関連する負債について他の負債と区分表示されます。日本基準にはこのような基準・区分表示の要請はないため、この点で差異があります。

(2)実務への影響

IFRSに従った財政状態計算書を作成するに際して、自らの企業の流動・非流動の区分とその配列法を決定するとともに、IFRS第5号に規定されるような売却目的保有資産の有無について検討する必要があります。

3.包括利益計算書

(1)IFRSと日本基準の差異

IFRSではIAS第1号の2007年9月の改訂によって、従来の「損益計算書」に代えて、「包括利益計算書」が導入されました。包括利益とは、従来の「当期純損益」と「その他の包括利益の当年度の増減」の合計であり、「その他の包括利益」は、純損益に認識されない収益及び費用です(有形固定資産や無形資産の再評価剰余金の変動を含む)。

この「包括利益」は日本基準でも「包括利益の表示に関する会計基準」(2010年6月30日公表)が設定されたことで、少なくとも2011年3月31日以後終了する会計年度に連結ベースでの表示が義務付けられることになり、実質的に包括利益の差異はなくなっています。

その他の主要な相違としては下記のようなものが挙げられます。

(1) 営業損益の表示、営業外損益・特別損益の表示
IFRSの包括利益計算書では営業損益の表示は強制されておらず、また、日本基準のような経常損益、営業外損益、特別損益の概念もなく開示規定もありません。IFRSにおける営業損益は、投資損益、金融損益、持分法損益、法人所得税、非継続事業からの損益以外の損益となり、日本基準で特別損益に含まれていたようなリストラ費用、固定資産の売却損益や減損損失は、営業損益に含まれることになります。
(2) 非継続事業の損益の開示
IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」において非継続事業に分類された事業から生じる税引後損益及び非継続事業を構成する資産又は処分グループについての売却費用控除後公正価値での評価による税引後損益や処分によって認識される税引後損益の総計について、包括利益計算書の本体に「単独の金額」として表示することが要求されています(IFRS第5号33項(a))。この点、日本基準にこのような規定はないため、IFRSと日本基準との差異となっています。
(3) 費用の内訳の表示(費用性質法と費用機能法)
IFRSでは、費用の内訳の表示について、費用性質法(費用の性質または形態に基づいて費用を分類表示する方法:ex.減価償却費、原材料費、運送費、従業員給付費用、広告費等)と費用機能法(費用の機能に基づいて費用を分類表示する方法:ex.売上原価、販売費、管理費等)の2つが規定されています(IAS第1号99,102,103項)。この点、日本基準では損益計算書の様式が費用機能法を前提に定められており、IFRSと日本基準との差異となっています。

(2)実務への影響

IFRSに基づく包括利益計算書を作成するに際しては、自社の営業損益を表示するかどうか、非継続事業の有無の検討、費用の内訳開示として費用性質法と費用機能法のどちらを用いるかの決定が必要となります。

4.持分変動計算書とキャッシュ・フロー計算書

(1)IFRSと日本基準の差異

IFRSにおける持分変動計算書と日本基準での株主資本等変動計算書に大きな差異はありませんが、IFRSと日本基準でのキャッシュ・フロー計算書の間には以下のような差異があります。

(1) 営業活動によるキャッシュ・フローの表示方法
IFRSでは営業活動よるキャッシュ・フローの表示方法として、直接法(主要な取引ごとの収入総額と支出総額を開示する方法)と間接法(純損益から開始し、現金の受払いを伴わない取引、将来または過去の営業活動からの収入・支出の繰延・見越計上、および投資または財務活動に関連した収益・費用項目の影響を調整する方法)のいずれかの方法の選択が認められており、そのうち直接法が推奨されています(IAS第7号18,19項)。この点、日本基準でも直接法と間接法の選択が可能であるものの、直接法が推奨されてはいない点、基準上の差異があるといえます。ただし、実務上はIFRSにおいても日本基準においても間接法の利用が多いため、現状では実質的な差異はないといえます。ただし、2010年7月に公表された財務諸表の表示に関するスタッフ・ドラフトを公表し、直接法のみを認める提案が行われていることに留意する必要があります。
(2) 非継続事業に係るキャッシュ・フローの開示
IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」における非継続事業に関する営業活動、投資活動、財務活動に帰属する正味のキャッシュ・フローは、キャッシュ・フロー計算書又は注記によって表示・開示することが要求されます。この点、日本基準に関連する規定がないため、IFRSと日本基準の差異となっています。

(2)実務への影響

営業活動によるキャッシュ・フローについて直接法を採用するか間接法を採用するかの検討が必要になります。日本の実務上は間接法を採用しているケースが多いと思われますが、基準改訂動向に留意し直接法による表示を行うことを予定する場合にはシステムの導入も含め事前の準備が必要になります。また、非継続事業の有無についての検討が必要になります。

5.注記等

(1)IFRSと日本基準の差異

財務諸表の表示・開示に関連して、IFRSと日本基準の差異が大きいと一般に言われているのがこの注記を含めた開示の領域です。

主要な差異として以下のようなものがあります。

(1) 未適用の新基準書及び新解釈指針
IFRSにおいて、企業は公表はされているがまだ発効(強制適用)していない新たな基準書・解釈指針を適用していない場合であっても、(a)その事実、(b)新たな基準書の適用が適用初年度の財務諸表に与える影響額の評価に関する既知の情報または合理的に見積可能な情報を開示することが求められます。
なお、この点については日本基準においても「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(2009年12月4日公表)が設定され、未適用の会計基準等に関する注記については2011年4月1日以後開始する事業年度から開示が義務付けられることになっており、実質的な差異はなくなっています。
(2) 見積りの不確実性の原因となる事項
IFRSにおいて、企業は翌会計年度において資産や負債の帳簿価額に重要な修正を加える原因となる著しいリスクを伴う「将来に関してなされた仮定」と「報告期間末日におけるその他の見積りの不確実性に関する主な情報」を開示しなければならず、これらの資産と負債に関しては、(a)その内容、(b)報告期間の末日における帳簿価額の詳細も開示されます(IAS第1号125項)。
(3) 金融商品に関連する開示
1) 資本政策
IFRSにおいて、企業は財務諸表の利用者が企業の目的、方針および手続の評価を可能にするために、資本政策とその過程((a)資本管理の目的、方針、手続についての質的情報、(b)資本として管理するものの量的な数値データの概要、(c)(a)と(b)の前期からの変更、(d)当年度において、外部からの資本規制を企業が遵守していたかどうか、(e)外部からの資本規制を遵守していない場合にはその影響)を開示する必要があります(IAS第1134,135 項)。
2)感応度分析
IFRSにおいて、企業は金融商品の市場リスクに関連した感応度分析((a)報告期間末日現在で晒されている市場リスクの種類ごとの感応度分析、(b)感応度分析の作成に用いた手法及び仮定、(c)過年度からの手法及び仮定の変更、並びに当該変更の理由)を開示する必要があります(IFRS第7号40項)。
3) 金融商品について分類した公正価値のヒエラルキーのレベルの情報
IFRSにおいて、企業は財務諸表に認識されている公正価値測定について、金融商品の種類ごとに詳細な開示((a)公正価値測定のヒエラルキーのレベル、(b)公正価値ヒエラルキーのレベル1とレベル2の間の重要な振替及びその振替の理由、(c)レベル3の公正価値測定について、期首残高と期末残高との調整表等)を行う必要があります(IFRS第7号27A,27B項)。

(2)実務への影響

日本基準では求められていない開示事項について、必要なデータの特定、そのデータの収集方法(マニュアル作業かシステム化が必要か)等について、早期の検討が望まれます。

6.最新の動向

IASBは2008年10月にディスカッション・ペーパー(DP)「財務諸表の表示に関する予備的見解」を公表しており、そこでは以下のような提案がおこなわれています。

(1)財務諸表の表示に関して、事業活動に関する情報(事業活動についてはさらに営業活動に関する情報と投資活動に関する情報に区分)と財務活動に関する情報を区分するとともに、その表示区分を財政状態計算書、包括利益計算書、キャッシュ・フロー計算書において統一して採用する(一体性の原則)。
(2)財政状態計算書において、資産と負債を(1)の区分ごとに純額で表示する
(3) 包括利益計算書は1計算書方式のみとする。
(4) キャッシュ・フロー計算書において、営業キャッシュ・フローは直接法による表示とする

なお、当初のIASBプロジェクトタイムテーブルでは、メインとなる基準であるIAS第1号及び第7号の置換えに関する公開草案(ED)を2011年第1四半期までに公表予定でしたが、2010年11月にスケジュールが変更され、このIAS第1号及び第7号の置換に関しては2011年7月以降に審議を再開することとなりました。従って、今後、最終基準化までにはスケジュール・内容ともに変更が行われる可能性があることに留意が必要です。

第18回に続く

文中意見にわたる部分は執筆者の個人的な見解であり、執筆者の属する組織の公式な見解ではありません。

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